イタコの生口

霊と会話をする口寄せ

イタコの生口

口寄せとは、イタコや霊能者が依頼された人物の霊体を自らの体に憑依させ、憑依した身体を通して依頼者が霊体と直接会話を交わすことの出来る降霊術の一種です。霊体の言葉はイタコや霊能者の身体を介して発せられますが、口調や口癖、声色からすぐに本人と分かり、お互いに伝えたかったことを会話で伝え合います。

口寄せについては、東北地方のイタコの口寄せがあまりにも有名ですが、古くはの書記に、盲目または弱視の巫女をイタコと呼んでいたという記述があります。口寄せは古来より祈祷や占いで神からの前兆を告げたり、亡き人の霊を呼び寄せたりすることで、日本人の心を安寧へ導く役目を果たしてきたのです。

現代日本でも、大震災で大切な人を一瞬のうちに失ってしまった遺族の方々が、この口寄せによって、今一度家族や恋人に伝えられなかったことを伝えたいとイタコや霊能者のもとへ殺到しています。口寄せは遺族にとってはカウンセリングや癒しの効果も大きく、霊体と会話し、涙を流す遺族の方も多いそうです。

生霊を呼び寄せる生口

口寄せは、呼び寄せる霊体の種類によって分類され、それぞれの呼ばれ方があります。別ページでも開設していますが、ご神体を呼び寄せて憑依させる口寄せを「神口」、死後四十九日を経過し霊界へ成仏された霊体の呼び寄せを「仏口」、死後四十九日以内で葬儀を終えた霊体の場合は「死口」と呼びます。そして、まだ葬儀を終えていない亡くなった直後の死者の霊体や現世に生きている人間の生霊の口寄せを「生口」と呼びます。 「イキクチ」または「イキグチ」と読み、特に現存している人物の生霊を呼び寄せ、相手の霊魂と本心からの会話が出来るので、複雑な人間関係の問題を解決する手段として有効です。霊魂は偽ることが出来ないので、呼び寄せた霊体の本当の気持ちや秘密を知ることが出来ますし、媒介するイタコや霊能者はこのとき自我喪失状態にありますので、第三者を介していることを意識せず、率直に想いを伝えることも出来ます。

イタコや霊能者の「生口」の依頼の多くは、恋愛問題や家庭問題です。たった一人の人間も、毎日何人もの人間と関わって生きています。人生の歩みの中、内なる想いを心に秘め、関わっている人には告げず自分の中だけに留めておくことは誰にでもあるでしょう。それは、ときに人間関係を円滑にしますが、ときにすれ違いを生むこともあるのです。想い合っている男女や親子が、素直な本心を伝え合えなかったことで、その後の人生のお互いの関わりを断ってしまうことは多々あります。

幼い頃両親が離婚をし、家を出て新しい家庭を作った母親に逢いたい想いをずっと内に秘め、母親の幸せを願うあまり再会をあきらめかけていたある男性の話をしましょう。男性は友人の口寄せの体験談を聞いて、自分もせめて母親の気持ちだけでも知りたいと半信半疑で母親の生口をイタコに依頼しました。男性は母親の生霊を呼び寄せ憑依させるなど、信じられない話だったと笑って話してくれましたが、媒介した霊能者の口から出てきた言葉を聞いて涙を抑えられなかったと語ってくれました。
「腹はすいていないかい?腹いっぱい食べているかい?」
口調は幼い頃の記憶の中の母親そのものでした。
「かあちゃんの芋だんごがもう一度食べたい。」
食うに困っていた貧しい幼少時代の男性は、毎日毎日夕食を終えた後も「腹すいた、腹すいた」と駄々をこねて母親を困らせていたそうです。母を想い続けた男性はこのとき68歳、母親は90歳を超えておりましたがご健在とのことでした。行方が分からなかった母親の居場所を霊視で示唆し、母親にすぐに逢いに行くようにとのアドバイスまでしてくれたそうです。イタコの生口によって再会を果たした男性は、生きている母親に逢える最後のチャンスだったと涙ながらに語ってくれました。

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